それでもハニーは夢を見る
新聞の広告欄に載っていて、気になってた本がコンビニにあった。
活字は最低限、ほとんどイラストで表現したその本を、短時間で立ち読みしちゃったんだけど、
やっぱり後日書店で購入した。
「夢はいつも僕を裏切る。」
その本は、冒頭からその言葉で始まる。
主人公の青年のそばに、全身タイツを身に纏い擬人化した「夢」がいつもいる。
第一志望の大学に受からず、好きになった人に振り向かれず、やりたい仕事に就くことが出来ず、仕事のミスを上司からどやされる日々。
主人公の言うところ「つまらない人生。」
そんな主人公を夢は、「大丈夫、大丈夫、上手くいくよ!ファイトファイト!」と脳天気に励まし続ける。
けれど主人公は、
「これ以上、君といても苦しいだけだから・・・。」
と、夢を捨てる。
主人公は歳を取り、ひとりぼっちで臨終の時を迎える。
ベットの上でこれまでの人生を振り返り、頭に浮かんでくるのは、
なぜか何かを夢見て悪戦苦闘した日々だった。
かなわなかった夢なのに、あの日々が輝いて見える。
夢は捨てるべきではなかったのか?
すると、同じく年老いた「夢」がそばにきた。
主人公「もう、会えないかと思っていたよ。」
夢「僕は、いつだって君のそばにいたんだよ。」
夢は主人公に問う。
「やり残したことがあるんじゃないか。」
主人公は思う。
「私は、この世界に、自分が存在したという証を残したかった。
でも、がんばれなかった。才能もなかった。
私は、このまま消えていくのが怖い。
何も残せないまま、自分という存在がこの世界から消えていくのが、怖い。
何かを残したい。
たった一人でもいい。
誰かの心の中に、何かを残したい。」
夢はペンとノートを持ってきて、主人公に書いて、残すように伝える。
主人公は書こうと試みるけれど、ペンを離し、
「無理だ。何を成し遂げたでもない、こんなどこにでもいるような男の話を、
誰が聞きたいと思うだろう。」
夢は悲しそうに言う。
「君はいつもそうだった。
何かを始める時、上手くいくかどうかばかりを気にしていた。
人っていうのは、最後の最後まで変わらないんだね。」
よぼよぼのおじいさんになった夢は、苦しそうに身をかがめて、ベットの下に転がった
ペンをやっとのことで拾って、主人公に渡す。
夢「最後に一言だけ言わせてほしい。
・・・夢は、かなうんだよ。」
主人公「君だって全然変わってないじゃないか。」(泣笑)
そのあと、主人公は宛名のない手紙を書くのだが、
その内容が感動的なのだ。
とてもシンプルなのだけど。
夢をかなえることが出来たら、自分の人生が輝くと思っていた主人公。
夢をかなえていない自分の人生は、なんの輝きもない、つまらない人生だと思っていた主人公。
最後は、こう締めくくられる。
「でも、それは間違いで、
そのつまらない人生に、しがみつきたくなるくらい、
生きることは、素晴らしかった。
・・・生きること、そのものが、輝きでした。」
生きることは、本質的に、虚しいこと。
私自身、実のところ、自分の心の隙間を充実感や達成感で埋めようとしている。
単にそれだけに過ぎないのかもしれない。
けど、自分にとって、幸せってなんだろうと考えた時、
そうだなぁ・・・。
とにかく自分のやりたくないことをしたくない。やりたいことしたいというより。
自分の意思でないことをさせられない、しない人生。
とにかく流されたくない。
大地震で津波が起きて、飲まれそうになってるけど、絶対に流されるもんかって木にしがみついているイメージ。
自分で泳ぐほうがいい、流れに逆らってでも。限界ギリギリまでは。
自分で考え、行動したい。
自分の人生の主人でありたい。
コントロール出来ることについてはコントロールしたい。
たぶん死ぬ間際までそうしたい。
それから・・・。
感情豊かに過ごすこと。
腹の底から笑ったり、
感動して思いっきり号泣したり、
ワクワクしたり、
ドキドキしたり、
キュンと切なくなったり。
死ぬ間際までそんな自分でいれたら、幸せな人生を過ごせたなぁって思えるだろう。